日本応用数理学会2019年研究部会連合発表会
「数論アルゴリズムとその応用」(JANT)セッション

日時

2019年3月4日(月)15:00-16:50

会場

筑波大学 筑波キャンパス (〒305-8577 茨城県つくば市天王台1丁目1−1) 会場4(3A306)

参加費

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オンライン申し込み(2/24まで)

当日現金払い

プログラム

数論アルゴリズムとその応用(1) 15:00-16:20

  1. 同種写像暗号CSIDHの計算量評価と定時間実装の高速化
    ○小貫啓史(東京大学), 相川勇輔(北海道大学/東京大学), 山崎努(九州大学), 高木剛(東京大学)
    耐量子暗号の候補として, 同種写像暗号がある. これは, 2つの同種な有限体上の楕円曲線が与えられたとき, それらの間の同種写像を構成することの困難性に基づいた暗号方式である. 同種写像暗号の1つとしてCastryckらがASIACRYPT2018で提案したCSIDHと呼ばれる方式が存在する. CSIDHでは, 素体上の同種写像が虚二次体の整環のイデアル類群の作用とみなすことができるような超特異楕円曲線を用い, 秘密情報となるイデアル類群の元の作用が可換になることを利用して鍵共有を実現している. CSIDHの問題点として計算量が大きいことおよび秘密鍵によって計算時間に大きな差が生じることが挙げられる. 2つ目の問題点に対して, 最近Meyerらによって公開鍵の計算時間が秘密鍵の情報に依存しない定時間実装が提案された. 本発表では, CSIDHで必要とされる計算量を楕円曲線の定義体の演算回数で評価し, それに基づき, 高速化手法の定量的評価および安全性の評価を行う. さらに, Meyerらによる定時間実装の定量的な計算量評価も行い, その高速化についても考察を行う.
  2. 平面4次曲線の双接線に関する局所大域性
     伊藤哲史(京都大学理学研究科), ○石塚裕大(京都大学理学研究科), 内田幸寛(首都大学東京理学研究科),  大下達也(愛媛大学理工学研究科), 谷口隆(神戸大学理学研究科)
    平面4次曲線の双接線とは,2点で2重に接する直線のことをいう.双接線は 複素数体上では28本あり,代数幾何において古くから研究されているが, その数論的な性質については分かっていないことも多い.この講演では, 「双接線の存在条件が局所大域性を満たすか」という問題を考察し,一般には 局所大域性を満たさないことを示す.すなわち,有理数体上の平面4次曲線で あって,有理数体上は双接線を持たないが,実数体上およびすべてのp進体上で 双接線を持つものが存在することを示す.また,そのような平面4次曲線を 具体的に計算するアルゴリズムを紹介する.アルゴリズムの正当性の証明には, del Pezzo曲面の幾何と計算機によるSp(6,2)の部分群の計算を用いる.
  3. Signatureを用いたGröbner基底を求めるアルゴリズムの効率的な簡約方法
    ○坂田康亮(横浜国立大学大学院環境情報学府)
    2001年にJ.-C.FaugèreによりF5アルゴリズムが提案されて以降,signatureを用いたGröbner基底を求めるアルゴリズムに関して様々な手法や改良が提案されている. この講演はsignatureを用いたGröbner基底を求めるアルゴリズムの効率化に関するもので,アルゴリズム内で主要な計算である簡約回数を削減する方法提案する.特に,簡約 Gröbner基底を求める際に効果的な方法となっている.
  4. superspecial Howe 曲線の数え上げ
    ○千田駿人(横浜国立大学環境情報学府)
    superspecial 曲線とはそのヤコビ多様体が種数個の supersingular 楕円曲線の直積と閉体上同型である代数曲線を指す.本講演では種数4のsuperspecial性をもつある曲線の具体的な計算方法について提案する.その対象となるのが,Howe 曲線である.Howe 曲線とは2つの楕円曲線で定義され,それらのP^1上のファイバー積で表される.この曲線は Everett Howe 氏によって研究されており,superspecial 性に関するよい性質をもっている,これを基に数え上げが可能である.その性質を紹介し, superspecial Howe 曲線を数え上げるアルゴリズムについて講演にて述べる.

数論アルゴリズムとその応用(2) 16:30-16:50

  1. 円分体の相対類数の行列式公式の値の大きさの特異性とD-efficiencyについて
    ○谷口哲也(金沢工業大学基礎教育部)
    Demjanenko 行列は±1成分の行列で,この行列式の値は円分体の相対類数を表す.その値は±1をランダムに生成した行列式に比べて「極度に大きく」なることを数値実験にて観察している.数値的な観察結果の一例を挙げると, ±1をランダムに生成した行列式の値の分布の中においてDemjanenko行列式の値は平均から4.7標準偏差ほど大きな位置にあり,またHadamard行列がまだ見つかっていない716次行列に対応するDemjanenko行列式の値も極めて大きく,Hadamardの上限の約96.8%の大きさの桁数を実現している. この「行列式の値が大きい」という性質は,例えば実験計画法などの実学の問題への応用につながる可能性があると講演者は考えている. 本講演ではDemjanenko行列について現状で持っている数値実験結果および理論的に証明できる性質について報告したい.特にHadamardのboundとの比較,D-Optimal designs におけるD-efficiencyの漸近的挙動などについて述べたい.

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サイボウズ・ラボ株式会社 光成滋生 herumi@nifty.com