日本応用数理学会 第16回 研究部会連合発表会
「数論アルゴリズムとその応用」

日本応用数理学会・研究部会連合発表会

2/25 第16回 研究部会連合発表会中止のお知らせ

日程
2020 年 3 月 4 日(水) : 中止
場所
中央大学 後楽園キャンパス(東京都文京区春日1-13-27)
URL
第16回 研究部会連合発表会
参加費
上記URL参照

プログラム

各講演20分(質疑応答時間を含む)
○印は登壇者

数論アルゴリズムとその応用(1)[3月4日 13:30-14:50]

  1. グレブナー基底計算における多項式選択について
    ○新田篤志(首都大学東京)、星雄太(首都大学東京)、伊藤琢真(情報通信研究機構)、篠原直行(情報通信研究機構)、内山成憲(首都大学東京)
    グレブナー基底計算には Buchberger algorithm や F4 など様々なアルゴリズムが知られており, それらに対する改良も多く提案されている. これらのアルゴリズムの効率は, 使用する項順序, 不要な S 多項式の削除, 多項式の計算順序などと関係があることが知られている. このうち多項式の計算順序については詳細に言及されることが少なく, 未知の部分も多い項目である. 本講演では Buchberger algorithm 内での操作のうち, S 多項式生成に必要な多項式の組の選択, reducer の選択を対象に最適化を検証し, 数値実験を実施した結果について述べ, その考察を与える.
  2. 2次強Frobeniusテストを用いた素数判定法について
    ○原田悠汰(首都大学東京)、伊丹洸陽(首都大学東京)、篠原直行(情報通信研究機構)、内山成憲(首都大学東京)
    一般的によく用いられている確率的素数判定テストとして Miller-Rabin テストがある. このテストに関して, 底を小さい素数から順に動かしたとき, 連続してテストを通過する最小の合成数を探索することにより, 条件付きの効率的な確定的素数判定アルゴリズムを実現できる. 本発表では, Miller-Rabin テストよりも判定効率のよい素数判定法として知られている2次強 Frobenius テストを用いて同様な実験を行い, その結果に関する考察を述べる.
  3. Edwards曲線を用いた3者間SIDHについて
    ○深見心(首都大学東京)、内山成憲(首都大学東京)
    同種写像暗号SIDHは耐量子計算機暗号の候補の一つであり、超特異楕円曲線間の同種写像計算問題の困難性に安全性の根拠をおく暗号方式である。 SIDHは、通常Montgomery曲線を用いて実装することにより、演算や同種写像計算の高速化を実現している。 一方最近、KimらによってEdwards曲線上での同種写像計算が示され、Montgomery曲線とEdwards曲線を用いた手法でSIDHの高速実装を行った。 本講演では、彼らが用いた手法を3者間でのSIDHに適応し、その結果について述べる。
  4. 超特異楕円曲線上の同種写像グラフにおけるサイクルについて
    ○小貫啓史(東京大学)、相川勇輔(三菱電機)、高木剛(東京大学)
    素数lに対して, 超特異楕円曲線上のl-同種写像グラフとは, 有限体上定義された超特異楕円曲線のj不変量を頂点とし, l次の同種写像を辺とするグラフである. 本発表では, SIKEと呼ばれる同種写像を用いた公開鍵暗号における同種写像グラフのサイクルについて考察する. SIKEは耐量子暗号の候補の1つとして重要な研究対象となっている. SIKEでは, l=2,3としてl-同種写像グラフの部分グラフが用いられる. この部分グラフは, 初期曲線と呼ばれるある曲線のj不変量から一定の長さ以下のパスを持つ頂点の一部とそのパスで構成される. 我々は, 初期曲線の自己準同型環と同型となる四元数環の極大整環を特定し, その極大整環の構造を調べることで, サイクルがあるDiophantus方程式の解と対応することを示した. そして, SIKEの具体的なパラメータであるSIKEp434とSIKEp503においてその方程式の解を全て求めた. 結果, SIKEp434にはサイクルは2つ存在し, SIKEp503にはサイクルが存在しないことがわかった.

数論アルゴリズムとその応用(2)[3月4日 15:00-16:20]

  1. 約数関数σ(n)とオイラー関数φ(n)を含む不定方程式の整数解について
    寺井伸浩(大分大学)、○新庄慶基(大分大学)、仲敷沙耶(大分大学)
    本講演は、nを正の整数とし、約数関数σ(n)とオイラー関数φ(n)を含む不定方程式σ(n)±φ(n)=p^x(p:素数)について考え、それらの正の整数解について研究を行った。 ここで、x=1である正の整数解は無数に存在するので、x>1の場合について考える。 特に、p=3のとき、n=q^kとした不定方程式σ(q^k )±φ(q^k )=3^xの場合で様々な結果が得られたのでそれらについて紹介する。 本研究には初等的方法を用いて証明を行い、得られた正の整数解が存在する範囲を確かめる際に数式処理システムMAGMAを用いている。
  2. 一般化3x+1予想の平均サイクル長と、整数環の特徴量との相関について
    ○藤井大輔(名古屋大学)
    3x+1予想(別名Collatz予想)は整数論の未解決問題で、次のように定式化される。 「整数上の変換fを f(x)=x/2 (if x is even) or 3x+1 (if x is odd)と定義したとき、任意の正整数xについて、ある正整数kが存在してf^k(x)=1が成り立つ」 このとき、f(1)=4, f(4)=2, f(2)=1 であるから、数列a_n=f^n(1) は 1,4,2,1,4,2....を繰り返す。 この循環節(1,4,2)をサイクルと呼ぶ。 講演者は、3x+1予想と、それを代数体の整数環に拡張した問題について研究している。 今回、計算機による数値計算により、拡張した問題に現れるサイクルの長さが、問題を考えている整数環の特徴量、すなわち単数群やイデアル類群を反映していると推測できる観察結果を得たのでこれを報告する。 また、時間が許せばサイクルを検出するアルゴリズムの工夫点についても触れたい。
  3. 有限体を用いた数独解の構成
    ○桑嶋大地(東邦大学)、足立智子(東邦大学)
    数独は、ラテン方陣と密接な関係がある。 位数nのラテン方陣とは、n×nの配列に、n個の文字(シンボルと呼ぶ)を、各行および各列のシンボルが全て異なるように並べた配列である。 シンボルの集合をΩとする。 数独解とは、次の条件を付加した位数n^2のラテン方陣である。 その条件とは、その配列を、小配列が全てのシンボルを含むように、n×nの小配列に分割することである。 n=3のときの数独解は、通常の数独パズルの空白のセルを全て数字で埋めた完成形になっている。 2つのラテン方陣を重ね合わせた時に、シンボルの順序対が全て異なっているならば、その2つのラテン方陣は直交しているという。 t個のラテン方陣の集合Λについて、任意の2つのラテン方陣が直交しているとき、ΛはMOLS (Mutually Orthogonal Latin Squares)であるという。 tはn-1以下であるが、t=n-1のときのMOLSをcomplete setという。 Ωが有限体であるとき、MOLSのcomplete setが構成できることが知られている。 数独解において、MOLSに相当する概念を導入して、complete set の構成法を述べる。

問い合わせ先

神奈川大学理学部情報科学科 松尾和人k-matsuo@kanagawa-u.ac.jp