第3回「代数学と計算」研究集会(AC99)アブストラクト

講演者または提案者による原文のままの「内容の簡単な解説」です.
その後に加筆・修正された場合は, その文章に置換えられています.
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☆知念宏司(大阪府立大学)・平松豊一(法政大)
  --- Hyper-Kloosterman符号の諸性質 ---
    Hyper-Kloosterman 符号は, 知念・平松により構成された trace code の
    一種ですが,最近明らかになった2つの性質:
        1. 準巡回符号として実現できること
        2. 無限個の doubly even な符号を構成できること
    について解説したいと思います.また,指数和と trace code の一般論も
    最初に少し述べるつもりです.
☆別宮耕一(名古屋大学)
  --- Formally Self-Dual Codeの分類 ---
    binary code C と、その dual code C^{\perp} の Weight Distribution
    が一致するものは、formally self-dual code と呼ばれている。この
    formally self-dual code の長さの小さいものを計算機によって分類した。
☆Pho Duc Tai(東京都立大学)
  --- On Constructive Algebraic Curves Theory ---
    We present a variety of computational techniques to compute
    invariants of algebraic curves: local and global (Puiseux pair,
    Milnor number, genus, dual curve, etc...). Standard bases (or dual
    Groebner bases) and combinatorial method (toric geometry) will be
    introduced. We will show the Maple V5 package SCURVE.  And an
    invitation to constructive hypersurfaces theory.
☆鈴木素子(東京大学)
  --- 有限体上において多数の有理点を持つ曲線について ---
    代数幾何符号を構成するために、三浦晋示氏により Cab 曲線が提案され
    ました。そのうち、a=3, b=4 となるものについて探索した結果、新しい
    最大曲線や有理点を多数持つ曲線が見つかりました。方法と今後の計画を
    紹介したいと考えております。
☆小木曽岳義・宮部剛(筑波大学)
  --- 2-simple概均質ベクトル空間の相対不変式について ---
    概均質ベクトル空間の相対不変式は、既約な場合に佐藤幹夫先生と木村達雄先生
    により、殆んど構成され、その後残った場合について、行者明彦先生、落合啓之氏
    などにより構成されてきて、既約でない場合のsimple概均質ベクトル空間
    について、木村達雄先生が構成しているが、その続きとして、我々は2-simple
    概均質ベクトルの相対不変式について1つを除き全て構成した。
    構成する際、主に落合氏の構成法にヒントを得て、いきなり、
    $ (GL_1, {\bf C}^{\times} )$へのG-equivariantな全射を考えるのではなく、
    もう1ステップおき、一度、ある空間へのG-equivariantな全射を作り、
    そこから$(GL_1, {\bf C}^{\times})$へのG-equivariantな全射を作る方法で
    構成した。2段階のうちの最初のステップが本質的でそこのところを中心的に
    お話ししたいと思っている。
☆宗政昭弘(九州大学)
  --- Hermitian modular forms constructed from invariants of a finite group ---
    環 Z[i]/2Z[i] 上の Type II code から、 Gaussian integral
    unimodular lattice ができ、その theta series として Hermitian
    modular form ができるが、 lattice を経由せず、 code の symmetrized
    weight enumeratorから直接 Hermitian modular form を構成することが
    できる。この構成法は実は code から離れて、ある有限群の不変式からの
    構成と考えることができる。その有限群は次数10の不変式が1次元あり、
    それを具体的に求めることによって weight 10 の Hermitian modular
    form が得られる。
☆原田昌晃(山形大学)
  --- The lifted Golay codes and their lattices ---
    近年、有限環上、特に、整数の剰余環 Z/kZ の code が興味を持たれている。
    例えば、binary cyclic Golay code の生成多項式を Hensel の Lemma に
    よって Z/4Z 上の多項式に lift し、Z/4Z 上の lifted Golay code が
    定義され、Construction A によって Leech lattice を構成する。
    これは、数々知られている Leech lattice の構成方法の中で非常に単純なもの
    にあたる。
    最近、Calderbank and Sloane が上のアイデアを拡張し、Z/2^kZ 上の lifted
    Golay code を定義した。ここでは、これらが 24-次元の even unimodular
    lattice の内のどの lattice になるかを k=<20 において決定する。
    また、その結果から、一般にはどのようになるかの予想も与える。
☆小林滋・吉川隆吾(鳴門教育大学)
  --- On the subresultant chain in view of the pseudodivision ---
    Loos has shown that the elements of the subresultant chain of two
    one variable polynomials in a commutative ring with identity are
    expressed by the other and their nominal leading coefficients.  We
    shall study the method of computing those elements in view of
    pseudodivision and finding a common divisor of two polynomials.
    Similarly with case of one variable polynomials, we will also
    study on several variables.
☆橋口博樹(東京理科大学)
  --- 2元表の総数計算と対称式の数式処理 ---
    2元表の数え上げは,対称群のコセット分解などの代数学と関係が深いだ
    けでなく,数理計画法における輸送問題や統計学における2元(分割)表
    解析など,応用分野でも必要となる手法である.発表では,2元分割表解
    析を例にとり,そこでの問題が代数学や組合せ論とどのように関わってく
    るかを解説し,特に,2元表の総数計算のためのアルゴリズムについて報
    告する.
☆横山和弘(富士通研究所)
  --- modular技法による多項式のGalois群と分解体の計算 ---
    有理係数既約多項式の Galois 群の計算法として, p-進体上の分解体を利
    用した方法が有効であったが, この情報を更に使って有理数体上の分解体
    を効率良く計算する方法を提案する.
☆長尾孝一(関東学院大学)
  --- 超楕円曲線のヤコビアンの群演算に関する幾つかの工夫 ---
    超楕円曲線のヤコビアンの群演算に関しては Cantor によるアルゴリズム
    が良く知られ また使われている。また有限体上定義された超楕円曲線の
    ヤコビアンの群は暗号への応用が期待されている。ここでは、1.まず
    Cantor によるアルゴリズムを述べ、次に 2. 有限体係数の多項式の計算
    に関する幾つかの工夫を述べ、これらの工夫の下で割り算の回数を減らす
    ことによって、ヤコビアンの群演算が高速化されることを示す。
☆安東祐希(法政大学)
  --- 形式的証明の一意性に関するある定理について ---
☆倉田俊彦(東京都立大学)
  --- λ定義可能関数の値域に関する考察 ---
☆坂井公(筑波大学)・高橋孝一(電子技術総合研究所)・藤田博征(筑波大学)
  --- 標数2のある体での計算アルゴリズムについて ---
    自然数あるいはその拡張としての順序数を 2 進表記し,その上の加法と
    して排他的論理和(ニム和),乗法として Conway の考案によるニム積を考
    えれば,順序数の全体が標数 2 の体になる。この体 $\On_2$ の上で計算
    を行う上でのアルゴリズムについて述べる。
☆松井泰子(東海大学)
  --- 整数計画問題の解の全列挙 ---
    整数計画問題の解をグレブナー基底を用いて列挙するアルゴリズムについ
    ての発表(予定)
☆橋本竜太(名古屋大学)
  --- 整数のOstrowski表現と2元2次不定方程式の求解について ---
    D は平方数ではない正整数、N は整数とする。X^2 - D y^2 = N の整数解
    はOstrowski 表現という概念で特徴付けられることがRockett と Sz\"usz
    により主張された。今回の講演では、彼らの主張を再検討した上で、この
    不定方程式の求解のアルゴリズムを構築する。さらに、sqrt{D} の連分数
    展開の周期が短い場合について、不定方程式の可解性を詳細に検討する。
☆竹内良平(東京都立大学)
  --- 原始根に関する多項式型Artin予想への解析的アプローチと計算機実験 ---
    「原始根に関するArtin予想」とは、整数aがmod pで原始根となる様な
    素数pが無限に存在するか?という問題である。この予想の多項式型の
    一般化を考え、ある種の多項式に対して一般Riemann予想を仮定する事
    によって、これが解決できたのでそれを報告する。また、予想を仮定
    している結果なので計算機実験による検証についても触れたい。
☆木田雅成(電気通信大学)
  --- KASHによる楕円曲線の計算 ---
    代表的な数論ソフトである KASH は高機能であるが、楕円曲線に関する
    program が含まれていない。そこで、代数体上の楕円曲線の基本的な不変
    量を計算する KASH program をつくったので、その解説をする。
☆山村健(防衛大学校)
  --- 円分体の整数の絶対ノルムの計算 ---
☆金山直樹(早稲田大学)・内山成憲(NTT情報流通プラットフォーム研究所)
  --- LLLアルゴリズムを用いた素因数分解法について ---
    最近, Boneh 等によって提案された,LLLアルゴリズムを用いた素因数分
    解アルゴリズム(LFM: Lattice Factoring Method)の紹介及びこのアル
    ゴリズムの改良について我々の考察した結果を述べる.LFMは $N = p^r
    q$ 型の合成数(ただし$p, q$ を同じサイズの異なる素数,$r$ を自然数
    とする)に対するもので, 特に $r$ が大きい場合に非常に有効で,入力
    サイズ($\log N$)の多項式時間で動くものである.素因数分解問題に基
    づく公開鍵暗号への攻撃法という観点からは, RSA暗号($N = p q$ 型の
    場合)や岡本等によって提案されている方式($N = p^2 q$ 型)等に対し
    て LFMは入力サイズの指数時間アルゴリズムとなり効率的でないことが言
    える.  このこととその理由についても述べる.
☆荻野淳也(東京都立大学)
  --- 円単数・楕円単数による代数体の類数計算の実例 ---
    有理数体あるいは虚2次体のabel拡大体の部分体の類数及び単数群を
    円単数、楕円単数を用いて計算することが出来る。
    この方法を用いて実際にいくつかの代数体で類数、単数群を計算する
    programを実装し、tableを作成したのでそれについて解説する。
☆小松啓一(早稲田大学)・福田隆(日本大学)
  --- ある実3次巡回体のλ_3不変量について ---
    今年の3月に早稲田大学で行なわれた整数論研究集会で、尾崎・山本氏は
    素数判別式をもつ実p次巡回体 k の initial layer k_1 において、イデ
    アル類群の p-part A_1 と p の上の素イデアルで生成されるA_1 の部分
    群 D_1 が一致するための必要十分条件を与え、この時k に対し
    Greenberg Conj. が成立することを示し、更に p=3 の場合に実例を与え
    た。本講演では A_1 != D_1 かつ p=3 の場合に D_2 を計算する方法を示
    す。D_2 は実27次アーベル体 k_2 のイデアル類群の部分群であり、KASH
    や PARI 等の既存ソフトでは処理できない。我々は k_2 の円単数を用い
    ることにより、いくつかの k に対しD_2 の位数を決定し Greenberg
    Conj. が成立することを確かめた。
☆林田秀一(大阪大学)
  --- 半整数ウェイトのジーゲル保型形式とプラス空間 ---
    次数2のジーゲル保型形式で半整数ウェイトのものはいわゆるガンマ0
    (2)のとき、伊吹山が決めたが、この部分空間としてヤコービ形式と対
    応するものでプラススペースと呼ばれる者がある。これを求めた。求め方
    はすべて計算機による実験によるもので、この点ではテーマにあっていま
    す。
☆村林直樹(山形大学)・梅垣敦紀(早稲田大学)
  --- 主偏極2次元abel多様体のmoduli空間における有理的CM-点の決定 ---
    虚2次体Kの整数環を自己準同型環にもつ CM 型の楕円曲線で有理数体 Q
    上定義されるための必要十分条件はKの類数が1となることであった。 こ
    の事実から, 楕円曲線のmoduli空間に於いて, 虚2次体の整数環に対応す
    るQ-有理点となるCM-点は丁度9個存在することが知られている.  今回,
    これに対応する事実として, 主偏極2次元abel多様体のmoduli空間におい
    て, 4次CM体の整数環に対応するQ-有理CM点が丁度19個存在することを示
    すことができた.  証明に於いて19個の点が実際に存在することを, 計算
    機を用いて確認している.  また, これら 19 この点の Igusa invariant
    の値も計算機で近似計算できる.
☆島田伊知朗(北海道大学)
  --- On elliptic K3 surfaces ---
    複素数体上の楕円 K3 曲面の特異ファイバーの ADE-type 及び
    Mordell-Weil群の torsion 部分を全て決定した。(全部で 3693個ある。)
☆澤田秀樹(山形大学)
  --- 群と暗号系 ---
    組立関数が全単射となるような暗号系について, その組立関数が生成する
    群と暗号系との関係の代数的な特徴について説明する。
☆鈴木秀一(東京電機大学)
  --- 多重アファイン鍵暗号 ---
    数論的な代数幾何学は、既に有効に暗号理論に活用されています。発表者
    は数論的でない代数幾何学(双有理幾何学)を暗号理論に活用することをし
    ばらく研究していましたが、その副産物として多項式写像を活用した秘密
    鍵暗号を考案しました。この暗号の安全性について検討した結果、この多
    項式写像は、アファインであっても充分安全であることが分かってきまし
    た。この暗号を高速化していくことによって、今回の「多重アファイン鍵
    暗号」にたどり着きました。本暗号はストリ−ム暗号です。技術的な核心
    は、非常に周期の長い乱数の系列をほとんど無数に生成するアルゴリズム
    です。この暗号の特徴として、アファイン写像であるため、1バイトあた
    り整数の掛け算を1回程度しか実行しないことが挙げられます。したがっ
    て非常に高速です。パソコン上で 100 MBits/Sec 程度の暗号化をソフト
    ウェアのみで実現できます。また、単純な事実から、本暗号は極めて安全
    性も高いと考えられます。発表者のホームページ
    http://www.alles.or.jp/~abel/にはもう少し詳しい解説を載せておきま
    した。本研究はTAOの研究会、電子情報通信学会のISEC(於山形大学)です
    でに発表しています。
☆伊豆哲也(富士通研究所)
  --- 素因数分解に適した楕円曲線の生成法について ---
    楕円曲線法と呼ばれる整数の素因数分解アルゴリズムに適した楕円曲線の
    生成法について、実験結果とともに報告する。
☆佐藤孝和(埼玉大学)
  --- 有限体上の楕円曲線の位数計算について ---
    有限体 F_q (q = p^m) 上の楕円曲線の F_q 有理点の個数を求める方法と
    して Schoof-Elkies-Atkin の方法(漸近的に O((log q)^(4+ε)))が良
    く知られている。ここでは標数 p が 5以上で小さい場合に m→∞ につれ、
    j-invariant が F_{p^2} に属さないという条件つきで、O(m^(3+ε)) で
    計算する方法を構成する。(残念ながら p に関しては非常に振舞いが悪
    く、領域計算量も大きいので現時点で実用性は疑問ですが。)
☆伊豆哲也・小暮淳・横山和弘(富士通研究所)
  --- 有限体上の楕円曲線の有理点の個数計算:ICS法による高速化 ---
    楕円曲線暗号の安全性は楕円曲線の有理点のなす群の性質に依存し, その
    位数計算は重要になっている. ここでは, Schoof 法の改良法である SEA
    法において, 最適な計算手順を与える ICS 法を提案し, その効果を実際
    の実験例(大標数, および標数2)により検証する.
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リンク:
  • 第3回「代数学と計算」研究集会
  • 「代数学と計算」ホームページ

  • Ken Nakamula, Dept. Mathematics, Tokyo Metropolitan Univ., Japan