講演者リスト

12月2日(水)

12月3日(木)

12月4日(金)



宋慧玲, 伊藤浩行 (広島大)

巨大有限体の構成について

有限体構成の方法として一般的である、素体上の原始既約多項式を見つける方法 は位数が大きくなると構成が難しくなる。 我々は、Artin-Schreier拡大塔を利用することにより、拡大次数分の原始多項式 を探すことなく大きな位数の有限体を構成する方法を考察し、その再帰的構成法 により効率よい乗算アルゴリズムを与えた。講演では、構成法や演算アルゴリズ ムなどの理論的側面に加え計算機実験の結果にも触れる予定である。


新谷誠 (静岡大)

互いに素な シュタイナー系 S(5,8,24) と 5-(24,12,48) デザイン

X を v 点集合、B を X の k点部分集合(ブロック)の部分集合とする。X の任意の t 点部分集合を含むブロックの の個数がちょうどλ個のとき、D=(X,B) を t-(v,k,λ)デザインという。  互いに素な 5-(24,8,1) デザイン、5-(24,12,48) デザインがそれぞれ 50 個、35 個以上存在することを計算により示した。 特に、5-(24,12,6m) デザイン (m=24, 32, 40, 48, 56, 64, 72, 80, 112, 120, 128, 136, 144, 152, 160, 168, 200, 208, 216, 224, 232, 240, 248, 256)は今回始めて存在を示すことができたデザインである。


松岡聡 (産業技術総合研究所)

MLL プルーフネットの符号理論的研究

線形論理はここ20年の間、コンピューター科学向けの論理学の研究において重要なテーマの一つで あり続けた。線形論理の顕著な特徴の一つはプルーフネットの概念であり、これは線形論理において、証明あるいは (カリーハワード対応を経て)プログラムを有向グラフを用いて表現する方法である。 MLL プルーフネットはプルーフネットの核となる部分であり、その理論はすでに研究者の間で 安定した地位を持つと考えられている(一方で、これより大きな部分に関しては現在のところ研究が継続中である)。 ゆえに、MLL プルーフネットをより詳しく研究することには意義がある。 本発表では、MLL プルーフネットを解析するための新しい手法を提案する。この手法は符号理論の枠組みを用いる。 まず、MLL プルーフストラクチャと呼ばれるプルーフネットを含むグラフについての同値類を定義し、各同値類に 距離を導入する。各同値類の要素は 1. MLLプルーフネットならば、正しいコード要素と考える。 2. MLL プルーフネットではない MLL プルーフストラクチャならば、偽の、あるいは、改ざんされたコード要素と考える。 われわれの距離の定義は、MLL の2つの論理演算子の双対性に忠実な形で成されているのが特色である。 現在のところ得られた主要な結果は、この枠組みにおける各コードは、その中に少なくとも2つのコード要素(つまり MLL プルーフネット)が含まれるならば、1-エラー検出が可能であるが、1-エラー訂正はできない、というものである。 この結果の証明は、証明論的な性質がグラフ理論的な議論を用いて証明されているという点において興味深い。


[特別講演] 蓮尾一郎 (京大数理解析研究所/JSTさきがけ)

小宇宙原理とコンポーネント計算: 計算機システムの基礎理論としての普遍代数・余代数をめぐって

現代社会において非常に重要な計算機システムについて,その数学的本質を, 圏論的に定式化された普遍代数・余代数の理論を用いて理解する試みを紹介し ます.ラフに言って「代数=プログラム」,「余代数=システム」となり,前 者が後者を生成する操作的意味論というスキームを数学的には bialgebra として理解することができます.さらに,プログラミング言語を「与えられた システムを合成する言語」,すなわちコンポーネント計算として理解する と,余代数の圏と終余代数の持つ2重入れ子の代数構造(Baez & Dolan の「小 宇宙原理」)がたちあらわれてきます.この数学的枠組みと応用面へのフィー ドバックについてお話します.


知念宏司 (近畿大)

一般 Hamming 符号から作られる不変式のRiemann 予想について

1999年に I. Duursma によって導入された符号の zeta 関数は、より広く重み多項式型の 斉次多項式 W(x,y) に対して定義でき、とくに W(x,y) が MacWilliams 変換で不変な場合は その zeta 関数は関数等式をもち、Riemann 予想を考える ことができる。本講演では、一般 Hamming 符号から、ある方法で作った不変式は、ほとんどの場合、 Riemann 予想を満たすことを 証明する。証明は Eneström-Kakeya の定理の拡張とも 言える関数論的結果を示すことで得られる。


原田昌晃 (山形大/JSTさきがけ)

ExtremalType II ${\mathbb{Z}}_{2k}$-codes

Type II ${\mathbb{Z}}_{2k}$-codes の minimum Euclidean weight に関する上限を k=3,4,5,6 の場合に新たに証明し、 extremal code を定義する。さらに、長さ $8m$ $(m \le 8)$ で extremal Type II ${\mathbb{Z}}_{2k}$-code が必ず存 在することを示す。


三枝崎剛 (北海道大), 坂内英一 (九州大)

ユークリッド空間における 2 次元整数格子のある性質

L をユークリッド空間における 2 次元整数格子として, 次の条件を考える. 任意の自然数 n に対して, ちょうど n 個の L の格子点を通るような円が存在するとき, L を universally concyclic と呼ぶ. この概念は前原濶氏により定義され,\mathbb{Z}^{2} 格子や A_{2} 格子は universally concyclic である事が知られている. 本講演では,任意の 2 次元整数格子が universally concyclic である事を紹介する.更に,前原氏による 高次元への拡張も紹介する.


藤田育嗣 (日本大), 寺井伸浩 (足利工大)

楕円曲線 $E:y^2=x^3-nx$ の生成元

正整数 $n$ に対して有理数体上の楕円曲線 $E:y^2=x^3-nx$ を考える.Mordell の定理により $E$ の有理点のなす群は有限生成アーベル群であるが,その free part の生成元を調べたい.Duquesne (2007) は $n=(2k^2-2k+1)(18k^2+30k+17)$ が平方因子をもたないとき,ある $2$ 点が free part の生成元の系にいつも入り得ることを示した.本講演ではこれを拡張し,様々な $2$ 変数の無限族 $n=n(k,l)$ に対して同様のことが成り立つことを示す.



森川良三 (首都大)

ワーリングタイプの問題を探求する為の、いくつかの概念と方法 II

本講演は、AC2007 の同題の講演の続編である。( 以下では AC2007 の報告集の記事を [1] で引用し、ワーリング タイプ の 問題を W 問題 と略称する) (1)[1] で述べた4変数のフロベニウス問題解決の為の、多くの 難点は克服出来た。(これは非常に長い議論なので、報告集で詳説する) (2)3変数2次の W 問題が、本講演の主題。 これを解決する為に いくつかの概念、方法を導入する。例えば (イ)いくつかの新しい篩 (ロ)FGH分解 (ハ)外形式という概念 など。 これらによって 理論の骨格はできたが、細部の詰めが残っている。 (3)最後に、4変数3次の W 問題 についてかなり奇妙な (しかし ありそうな)予想を提起する。


酒井祐貴子, 橋本喜一朗 (早稲田大)

$\sqrt{2}$乗法をもつ曲線とHumbertのモジュラー方程式の一般化について

$X$ を種数 $2$ の超楕円曲線とする. $X$ のヤコビ多様体の 自己準同型環が判別式 $\Delta$ の実二次体の整数環を含むとき, $X$ は実乗法をもつという. Humbertはテータ関数やKummer曲面を用いて, $X$ が $\Delta=5,8$ での実乗法をもつ場合に, $X$ を射影直線の二重被覆と見たときの分岐点とPonceletの多角形の 間に興味深い関係を見出した. また$5$ 次式 $f(x)$ で定義される曲線 $X:y^2=f(x)$ に対し, $X$ が $\Delta=5,8$ で実乗法をもつための条件式 を与えている. 本講演では $\sqrt{2}$ 乗法をもつ種数2の曲線を Humbertとは別の方法で初等的に求め, 更に$6$次式で定義される 曲線に対してより一般的な条件式を与える.


大石亮子 (高エネルギー加速器研究機構)

トポグラフを用いた3次元粉末結晶の格子を決定するアルゴリズム

ニ次形式のZ上の簡約に用いられるトポグラフの応用として、粉末結晶の回折スペクトルから結晶格子の形を決定する新しいアルゴリズムを紹介する。粉末結晶の回折スペクトルは、3次元の periodic point set の平均テータ級数と呼ばれるものに等しいと考えてよいが、平均テータ級数からの格子の決定は、テータ級数から格子を決めるよりも難しい。トポグラフはこれまで2次元でしか定義されていなかったが、3次元格子に適用するために定義を一般次元に拡張した。3次元以上でトポグラフがどのようなグラフ構造を持つかも紹介する。


[特別講演] 黒田茂 (首都大)

多項式環をめぐるいくつかの話題

多項式環は,代数学において最も基本的な対象のひとつである.多項式環の周辺には, 数々の重要で難解な未解決問題があり,その中には進展の乏しい問題も多く含まれている. この講演では,多項式環の自己同型をめぐる問題や,部分環の生成系に関する問題を取り上げ, いくつかの古典的な結果や最近の研究成果を紹介する.


清野善裕, 吉田仁, 金田康正 (東大)

Riemann zeta函数の零点とその計算の基礎について

Riemann zeta函数の零点の性質とその計算実験に関して基本的な所から紹介します. まず,研究の対象となる零点の値についてRiemann予想を初めとして前提となる性質を最初から順を追って解説します. 次に零点の計算を実際に高速に行う時に用いられる方法,Odlyzko Schönhage法について取り上げ, 現実に計算するには速度上どのあたりが問題になっているかなどを詳しく見ていきたいと思います.


村田玲音 (明治学院大), 神谷諭一 (大東文化大)

数論的関数とコード・システムのある関係について


谷口哲也 (東京理科大)

非正則素数の高速計算

本公演では非正則素数$p$の計算について報告する. Buhlerら(2001年)によって$12,000,000$以下の非正則素数が計算されているが, 講演者はこの範囲より先の非正則素数をすでに幾つか見つけている. 特に非正則素数計算の高速化および関連するBernoulli数の問題について述べる.



長谷川武博 (都留文科大), 犬塚美代子, 鈴木隆文

関数体の塔に関する Elkies 予想の数値的証拠

$K$ を $q^{2}$ 個の元をもつ有限体と し,$g(F)$ (resp. $N(F)$) を関数体 $F$ の種数 (resp. $K$-有理点の個数) と する.関数体 $F_{i}/K$ からなる無限 列 $T= (F_{0}, F_{1}, F_{2}, \ldots)$ が いくつかの条件をみたすときに $T$ を 再帰的塔という.もし $\lim_{i \to \infty} N(F_{i})/g(F_{i})=q-1$ となるならば $T$ を最良という.いくつ かの例をもとにして,Noam D. Elkies は 1997 年に「すべての再帰的最良塔 はモジュラーである」と予想した.この 予想は現在でも未解決である.この講 演では,この予想に対するいくつかの 数値的証拠を紹介する.


小松尚夫 (弘前大), C.K.Caldwell(Univ.Tennessee at Martin)

Powers of Sierpinski numbers base $b$

A Sierpinski number is a positive odd integer $k$ such that $k\cdot 2^n+1$ is composite for all $n>0$. It has been shown by Filaseta et al. that given any integer $R>0$, there are integers $k$ for which $k,k^2,k^3,\dots,k^R$ are each Sierpinski numbers. In this talk we generalize this to base other than $2$.


堀口直之 (千葉大)

Hall-Janko群で不変な rank 3 グラフと rank 4 グラフについて

Hall-Janko群の rank 4 グラフとして得られる2個の strongly regular graph と 1個の regular graph の maximum clique と coclique について調べ, これらのグラフを9元体上の3次元ユニタリ空間から構成した。 また, Hall-Janko群の rank 4 グラフの maximum clique から rank 3 グラフを構成した。


平野貴人, 田中圭介 (東工大)

1 のベキ乗根とその暗号への応用

1998年に岡本と内山は加法的準同型性を 持つ効率的な公開鍵暗号方式を提案した. 翌年の1999年に Paillier は岡本-内山方式を拡 張した. さらに2001年に Damgard と Jurik により Paillier 方式の法に関するさらなる一般化が行われた. 今回我々は Damgard-Jurik 方式に1のベキ乗根を組み 込むことによって,準同型性と密接な代数的な 性質を持つ公開鍵暗号方式を提案する. また、1のベキ乗根の計算と素因数分解の関連に ついても述べる.


佐々木義卓, 大野泰生, 山崎知佳 (近畿大)

ある離散対数問題に関する古典アルゴリズムと量子アルゴリズムの比較について

van DamとShparlinskiは、量子アルゴリズムを構成して、有限体上の2変数の 指数多項式の零点を計算した。本講演では、van DamとShparlinskiの結果の拡張、 すなわち、量子アルゴリズムを用いたより一般の多変数の指数多項式の零点の計算 に関する結果を紹介する。また、この量子アルゴリズムと古典アルゴリズムの計算量 の比(古典/量子)をとることで、それらを比較する。そのとき、計算量の比は変数の増加 に対して単調減少で、2に収束していくことが観察された。この現象は、古典と量子の ある種の境界線を意味するものと考えられる。


小暮淳 (富士通研)

格子と暗号の数理


島田伊知朗 (広島大)

超特異K3曲面と格子理論

ピカール数が22に等しいK3曲面を超特異K3曲面という. 超特異K3曲面は正標数においてのみ存在し, 正標数特有の興味深い幾何を持っている. Rudakov-Shafarevichにより 超特異K3曲面のネロン=セヴェリ格子の構造は完全に決定されいる. 講演では,この格子の構造からいかにして幾何学的な情報を得るかについて お話しする.


田中圭介 (東工大)

イデアル格子を用いた Fully Homomorphic Encryption について

2009年に Craig Gentry によって提案された、イデアル格子を用いた Fully Homomorphic Encryption について解説する。この方式によって、 暗号化されたデータを入力とする論理回路の出力値の評価を、暗号化 されたデータを復号することなく行うことができる。ここでは、イデ アル格子を用いた公開鍵暗号が道具として主に用いられる。


國廣昇 (東大)

RSA暗号に対する格子攻撃

RSA暗号は,素因数分解の困難さに安全性の根拠を置いており, 現状では,効率的な解読法は発見されていない.しかしながら, いくつかの制限のもので,解読できてしまうことがわかっている. 例えば, (1) $N$の素因数$p$の半分のビットが漏れているとき,素因数分解が できる, (2) 秘密鍵$d$が$N^0.292$よりも小さい時,多項式時間で破られる, ことがわかっている. この発表では,この二つを行う格子理論に基づくアルゴリズムを 紹介する.ついで,(2)のアルゴリズムで用いられる格子は,(1)の アルゴリズムで用いられる格子から変換されることを示す.最後に, この変換は,他の暗号の解読問題にも適用可能であることを示す.


リンク:


$Date: 2009/11/27 09:40:47 $+ 9:00:00 (JST)