2009年度連合発表会
「数論アルゴリズムとその応用」 (JANT) 講演要旨

西 遥, 前田 博之, 内山 成憲 (首都大学東京)
楕円曲線を用いた秘密分散共有法
本発表では、Shamir による (k,n) しきい値法を有限体上の楕円曲線を用いて実現する1つの方法を提案する。
提案方式の計算量評価や、python/NZMATH 上で提案方式を実装した結果についても述べる。
市来 信吾 (首都大学東京)
楕円曲線素数証明のシステムNZMATHへの実装
首都大学東京の中村研究室で開発中の計算システムNZMATHには素数判定法として Miller-Rabin法やヤコビ和テストといった判定法は実装されているが、 ある自然数の素数性を証明をする方法として有効な楕円曲線素数証明(ECPP)が実装されていませんでした。
そこでECPPとアルゴリズムに必要なHilbert類多項式及びDedekind−eta関数の計算プログラムをNZMATHに実装し、 実装の問題と実際の計算結果について報告します。
堀川 清司, 小崎 俊二, 松尾 和人 (情報セキュリティ大学院大学)
Pythonインタプリタの多倍長整数演算の改良
簡便さとポータビリティを持つことからスクリプト言語として広く利用されているPythonは多倍長整数を扱うことが可能であるが、 その処理速度は暗号技術などでの利用を考えると不十分である。
本発表では、Pythonにおける多倍長整数表現の最適化による演算速度の改善結果を示す。
更に、除算においてはKnuthのアルゴリズムを厳密に実装することで、 2000ビット程度の整数に対する演算速度が約2倍となったことを報告する。
石黒 司, 小崎 俊二, 松尾 和人 (情報セキュリティ大学院大学)
Multipoint evaluationの高速実装
有限体上の多項式のmultipoint evaluationは、数論アルゴリズムや情報セキュリティ技術の基盤アルゴリズムとして広く用いられている。
これの高速な方法としてMoenck達によって提案された剰余木を用いるアルゴリズムがよく知られている。
Bostan達は、これのより複雑であるが効率的な改良を示している。
一方、利用する除算アルゴリズムの構成を考慮した、より簡明な効率化手法も知られている。
本講演ではこれらのアルゴリズムの実装比較を行う。
長濱 紗智, 林 紘, 高嶋 恵三 (岡山理科大学)
ある種の無理数回転の discrepancy と連分数展開について
自然数 a のべき乗の先頭桁の問題から派生して、 a の常用対数による無理数回転のdiscrepancy の問題を考える。
特に、 a = 7 の場合の異常な現象、 2455069 の周期で増減を繰り返す、について Schoissengeier による結果を紹介しながら議論する。
金子 元 (京都大学)
等比数列の小数部分の分布, 特にBorel予想について
正数ξが自然数の底αについて正規数であるとは、ξのα進展開におけるdigitが一様に現れることである。
これは初項をξとする公比αの等比数列の小数部分が一様に分布することと同値である。 Borelは任意の代数的無理数がすべての底αについて正規数であると予想した。
本講演ではBorel予想の一般化として、初項および公比を代数的数にもつ等比数列の小数部分の分布について 知られている結果を述べる。
山田 智宏 (京都大学)
An analog of perfect numbers involving the unitary totient function
We consider the unitary totient function $\varphi^*(n)=\prod (p^e-1)$,where $p^e$ runs over all prime powers such that $p^e\mid n$ and $p^{e+1}\not\mid n$.
Analogous to perfect numbers, we study some properties of integers $n$ such that $\varphi^*(n)$ divides $n$.
小椋 直樹 (首都大学東京)
単数指数の構造について
類数は, 整数環の振る舞い等を記述する, 代数体の研究における最も重要な不変量の一つである。
しかし, 類数の計算は準指数時間アルゴリズム以外に知られておらず, 一般に困難である。
一方, 単数群の計算は類数の計算に深く関係しており, 単数群自体も興味深い対象となっている。
本発表では, 単数群をその部分群の単数群から構成することを考え, 単数指数と呼ばれる真部分体の単数群による剰余群の指数を考察する。
特に, 二面体型の八次ガロア拡大体について知られている結果を紹介する。
谷口 哲也 (東京理科大学)
円分体の相対類数の高速計算
円分体の相対類数計算、とくに素数べき円分体や合成数円分体の相対類数に関して報告する。
2次元FFT乗算を用いたアルゴリズムと中国式剰余定理を用いたアルゴリズムの比較および、 並列計算機での実行結果についても触れる予定である。
森澤 貴之 (早稲田大学)
有理数体の円分$Z_{3}$拡大の類数問題
有理数体の円分$Z_{p}$拡大の中間体の類数が1かどうかということが問題となっています。
ですが、類数が1であるかの判別は難しいため、素数$\ell$でわれるかどうかを考えます。
$\ell$=$p$の場合は、岩澤健吉により、類数が$p$でわれないことが証明されました。
異なる$\ell$と$p$に関しては、最近、堀江氏が精力的に研究されています。
$p$=2については、小松氏、福田氏により、研究が進められております。
今回の講演では、$p$=3の場合、有理数体の円分$Z_{3}$拡大の中間体 の類数が$\ell$でわれるかどうかに関する結果と、用いたアルゴリズムについて 話させていただこうと思います。
平之内 俊郎 (京都大学)
Flat modules and Gr\"obner bases over truncated discrete valuation rings
(joint work with Y. Taguchi)
離散付値環も含む頂切離散付値環 (truncated discrete valuation ring) を 係数とする多項式環上の自由加群に於ける Groebner 基底を用いた加群の平坦性判定法を与える.
応用として, 頂切離散付値環上の有限型代数が離散付値環へ持ち上がることを示す.

問い合わせ先
岡山理科大学 青木美穂
aoki@xmath.ous.ac.jp

最終更新日: 2009.2.18
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