2013年連合発表会
「数論アルゴリズムとその応用」 (JANT) 講演要旨
講演者は登壇者v学会員o非学会員x
- 「GF(p^12) 上の離散対数問題に対する数体篩法の計算機実験」
早坂健一郎vx (九州大学, k-hayasaka(at)math.kyushu-u.ac.jp)
青木和麻呂x (NTT)
小林鉄太郎x (NTT)
高木剛o (九州大学)
- 利便性の高い次世代公開鍵暗号であるペアリングの一つ,BN曲線を用いた
Optimal Ateペアリングの安全性は,GF(p^12)上の離散対数問題の計算困難性に
よって保たれる.CRYPTO2006においてJouxらは,素体GF(p)上の離散対数問題に
対する数体篩法を拡大体GF(p^n)上に拡張したが、この数体篩法による12次拡大
体GF(p^12)に対する実装実験は未だ報告がない.本稿では,素体GF(p)上の数体
篩法で用いられる2次元篩領域における篩を拡張することで得られた多次元篩領
域における篩を提案する.また篩領域の次元などの篩が高速となるようなパラ
メータを,見積り式を用いた数値実験により考察した.そして計算機1台により
実験し,203ビット位数の拡大体GF(p^12)上の離散対数問題を43時間 で求める
ことができた.
- 「楕円DH問題と計算量的に等価な問題について」
鑓水 淳一vx (首都大学東京, yarimizu-junichi(at)ed.tmu.ac.jp)
内山 成憲o (首都大学東京)
- 楕円曲線の等分多項式の持つ性質と同様の性質を持つ数列としてElliptic
Divisibility Sequence(以下、EDS)と呼ばれるものがある。2008年にLauter、
StangeによるEDSを用いた有限体上の楕円離散対数問題と計算量的に等価な問題
に関する先行研究はあるが、楕円DH問題との考察はなかった。今回、EDSを用い
た有限体上の楕円DH問題と計算量的に等価な問題とその等価性の証明を与えた
ので、これについて報告する。
- 「GF(p)上の超特異楕円曲線におけるHashToPointの高速化」
富田 琢巳vx (日立製作所/九州大学, t-tomita(at)math.kyushu-u.ac.jp)
高木 剛o (九州大学)
- RFC5091で提案されたBoneh-FranklinによるIDベース暗号方式 (BF方式) におけ
るHashToPointの高速化について考察する.このBF暗号方式では,標数p>5の素
体GF(p)上定義された超特異楕円曲線E:y^2=x^3+x (p=3mod4) と,その曲線Eの
q-torsion E[q]が利用される.ここでqはSolinas素数と呼ばれる2^a±2^b±1
(0<b<a) の形をした素数が用いられる.この時,コファクターc= #E/qが低
Hamming重みであれば,HashToPointで必要な楕円曲線のスカラー演算が高速化
可能となる.低Hamming重みのcを探索したところ,1024ビットのp (352ビット
のc)に対してHamming重み2のcが存在した.このcを用いてHashToPointを標準的
なPC上でC言語で実装したところ,15%の高速化が確認できた.
- 「奇数の完全数の最大素因子について」
石井大輔vx (岡山理科大学, s12mm01id(at)std.ous.ac.jp)
青木美穂o (島根大学)
澤江隆一? (岡山理科大学)
森義之? (岡山理科大学)
- 奇数の完全数の研究の重要なもののひとつとして「奇数の完全数の最大素因子」
があります.最大素因子について,1998年にHagis and Cohen は10^6以上である
こと,2003年にJenkinsが10^7以上であること,そして,2008年にGoto and Ohnoは
10^8をいずれも計算機を用い証明しました.Goto and OhnoはJenkinsのアルゴリ
ズムを改良し証明を与えています. 2012年に我々はGoto and Ohnoのアルゴリ
ズムと手法を改良し,奇数完全数の最大素因子が10^9以上であることを証明しま
した.最大素因子を一桁更新するためには約100倍の計算時間が必要ですが,我々
はこの改良によりその計算時間を大幅に短縮しています.今回この証明を講演内
容といたします.
- 「Woodall数の素数判定について」
浅見 和輝vx (首都大学東京, azami-kazuki(at)ed.tmu.ac.jp)
内山 成憲o (首都大学東京)
- 1969年にRieselによってN = h*2^{n}-1という形の自然数に対する素数判定法が
提案された。本講演では、Rieselによる素数判定法をWoodall数(W_{n} =
n*2^{n}-1)の場合に考察し、高速化を提案する。さらに、実装結果についても
紹介する。
- 「Ramification of Artin-Scherier extensions of surface over
algebraically closed field of characteristic p」
大井 理生vx (京都大学, ooimasao(at)math.kyoto-u.ac.jp)
- 加藤和也氏によって導入された(SurfaceのArtin-Scherier拡大について定義さ
れている)分岐に関する重要な$R$という量を計算するアルゴリズムについて述
べる。$R$の計算がどのように応用されるのかについても述べる。
- 問い合わせ先
- 中村憲 (首都大学東京)
nakamula(at)tnt.math.se.tmu.ac.jp