2015年 日本応用数理学会・研究部会連合発表会
「数論アルゴリズムとその応用」(JANT)セッション

日時

2015年3月6日(金)

場所

明治大学中野キャンパス(東京都中野区4丁目21-1)

会場へのアクセス

明治大学中野キャンパス

最寄駅

参加費


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プログラム

数論アルゴリズムとその応用(I)(11:00-12:00)

「同じZ上の表現を持つ三変数正定値二次形式の数え上げについて」
○富安 亮子 (高エネ研/JSTさきがけ)

概要:
二つの実数値の三変数正定値二次形式が同じ整数環上の表現を持つ ならば、それらは格子点間距離の集合が一致する異なる三次元格子に 対応し、化学的に類似した原子配置を与えるというだけでなく、 粉末指数付けと呼ばれる解析で解の一意性が成立しない例を与えると いう結晶学的な意味も持つ。そのような三変数正定値二次形式の組を 徹底探索した結果を紹介する。二変数二次形式の場合では、正定値の 範囲では、スケール倍と基底変換を除いて、同じ表現を持つ例は 一通りしかないことはすでに知られており、正定値の制限を外した 結果はDelang(1987)で得られている。三変数正定値の場合、二変数の 場合ほどではないが、得られた数は非常に少なく、何等かの強い制約が あることが予想される。

「On the computation of the dimensions of the cohomology groups of coherent sheaves on a projective space」
○工藤 桃成 (九州大学大学院数理学府)

概要:
体K上のr +1 変数多項式環 S = K[X_0,?,X_r] を考える。このとき、 射影空間 X = P_K^r 上の連接層は、ある有限生成次数付きS加群 Mから定まる。[1], [2], [3] において、このような加群Mは、次数付き 分解とよばれる、自由S加群による長さ有限の完全列を持ち、 Mにある条件を課せば自由加群のGroebner基底を用いて各自由加群 および各射の表現行列を完全に計算できることが証明されている。 従ってMにある条件を課した下では、Mに付随する連接層の定める コホモロジー群のKベクトル空間としての次元を計算できることが 予想される。 実際に [3] において任意次元の射影空間とその上の 連接層に対してコホモロジー群の次元は計算可能であることが証明 されている。また、計算機代数システムMagmaにおいても、 外積代数を用いた方法でその計算アルゴリズムが既に実装されている。 本講演では、[3] における証明をもとに、外積代数を用いずに、主に 自由加群のGroebner 基底、加群の次数付き分解、Cechの コホモロジーに関する性質および線形代数を用いて、上記のような コホモロジー群の次元を計算するアルゴリズムを紹介する。また、 そのアルゴリズムを用いて講演者が実装した関数、および幾つかの 計算例も紹介する。
参考文献:
[1] D. Cox, J. Little and D. O'shea, Ideals, Varieties, and Algorithms,UTM, Springer Verlag, New York - Berlin, 1992
[2] D. Cox, J. Little and D. O'shea, Using Algebraic Geometry, GTM 185,Springer Verlag, New York - Berlin, 1998
[3] 丸山 正樹, グレブナー基底とその応用, 共立出版, 2002


「p進拡大体の高速計算法に関する最近の話題」
○横山 俊一 (九州大学), 吉田 学 (九産大付属九州産業高校)

概要:
与えられた拡大次数と分岐に関する条件を持つような、p進拡大体の 同型類を高速に生成するアルゴリズムの開発における最近の進展状況を 解説する。講演者は主にpが奇素数で、かつ完全分岐アーベル拡大の 場合に世界最速のアルゴリズムを提案したが、一般のアーベル拡大の 高速生成には拡大次数に関する制約があった。このあたりの進展状況を 紹介すると共に、現時点で出来ることと出来ないこと(未解決問題)を 述べる。また、一般の拡大に対する同型類の個数勘定公式についても 言及する予定である。

数論アルゴリズムとその応用(II)(13:30-14:10)

「A public key cryptosystem based on diophantine equations of degree increasing type」
○奥村 伸也 (九州大学大学院数理学府)

概要:
量子計算機を用いた、整数の因数分解問題と群上の離散対数問題を 解くアルゴリズムがショアによって発表されて以降、(量子計算機は 未完成だが) 量子計算機を使っても解くことが困難である問題を 用いた、公開鍵暗号 (ポスト量子暗号) の研究が盛んに行われている。 本講演では、そのような問題の一つであると期待されている、 ディオファントス問題(整数係数多次多変数方程式の整数解・有理数解 を求める問題)を利用した公開鍵暗号を提案する。 より正確には、講演者が”degree increasing type”と呼んでいる ディオファントス方程式の求解困難性を利用している。 提案方式は、既に秋山・後藤氏らによって提案された 求セクション問題の困難性を利用した代数曲面暗号の類似である。 (求セクション問題は函数体上のディオファントス問題と見なせる)。 安全性証明はできていないが、現在までに知られている代数曲面暗号に 対する攻撃に耐性があると考えている。

「MQチャレンジ ~多変数多項式暗号の安全性評価~」
○安田 貴徳 (九州先端科学技術研究所)

概要:
多変数多項式暗号は耐量子暗号の候補であり、その安全性は 多変数多項式方程式系の解読問題(MQ問題)の困難性を基盤としている。 よって、与えられた多変数多項式暗号の安全性を正確に見積もるには このMQ問題の困難性を正確に把握する必要がある。 このような理由から、講演者は数人の研究者と共にMQ問題の解読 コンテストを計画している。この解読コンテストに使用するMQ問題の 作成方法についてお話しする。

最終更新日:2015年2月17日

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